今年の梅雨は昔のようにシトシトと降り続ける雨ではなく、
いきなり冷たい突風が吹いて、車に乗るのも躊躇われるほどになる。
朝起きて窓の外が晴れていても、それが続くとは限らない。
過去の定説を覆してしまうような天気だった。
近くの年で風速20メートルを記録したとニュースで流していたから、
我が家にも突風が吹いたのだろう。
裏庭にあったタラの木が真ん中あたりで倒れていた。
幹がバリッと折れてしまっているのである。
これまでは枝が折れるということは経験したことがあるけれど、
庭の立木がこんなふうに倒れたことは初めてのことだった。
とはいえ、タラの木は柔らかくて折れやすいから、今まで持ったのが不思議だが。
それで、思い出したけれど、
前に友人ととある観光地の由緒あるお寺を訪ねた時のことだ。
その時は食事のついでに立ち寄ったので寺の正門からではなく、
裏側入り口からその寺の境内に入った。
歩いていると下の方から異常な雰囲気が漂ってきた。
ロープを張られた場所に人々が立ち、しきりに石段脇の何かを見ている。
そして、有名テレビ局が幾つも来ていて、
それぞれが実況中継のように観光客にインタビューをしているのだった。
私たちの目に入ったのは、大木が倒れ落ちた姿だった。
この寺のご神木?である歴史的な銀杏の木が根元から倒れ落ちている。
相当に大きかっただろう樹齢〇年のその木が、朝方の突風で倒れたのだという。
験を担ぐわけではないが、こういう時は人は必ずそういう心理になるもので、
吉兆には決して見えなかった。
「これから先はどうなるだろうね」などと、そんな話を二人でし合った。
でも、「崩壊の後は再生、あの木は寿命、寿命」などと言って気を紛らわせた。
再生は事実だからである。
地球の生きとし生けるものは、気の遠くなるような再生を繰り返し続けている。
もし、それが途絶えたとしたら今のヒトは地球に存在していないことになる。
自然の時は人間の一生などと比べることはできないのだ。
その日の辺りから自然の荒ぶり方は想像を超えてしまった。
東北の大地震に続く各地の大地震、台風、未曽有の大雨による災害等々。
そして、極めつけがこのコロナウイルスの猛攻。
全てが自然現象なのだと思う。
自然には勝つわけがない。