お昼の体温は35度4分、インフル5日目となる。
昨日から床を離れて生活しているけれど、
咳と痰は相変わらず続いていて、部屋中に私の菌が舞っているみたいだ。
本当に厄介なインフルだ。
昨夜はまだ暗いうちに目が覚め、
悶々としていたらなかなか寝付けなかった。
いつもは絶対に見ない時計なのになぜか見てしまい、
何とまだ12時を過ぎたばかりで衝撃だった。
仕事から疲れて帰宅する夫に風邪を移しては気の毒なので、
彼が帰った途端に私は自分の寝室に逃げるようにして行った。
その時の時間が8時半だったから、
売れっ子タレントや強欲?な政治家などにしてみれば、
十分な睡眠時間なのかもしれない。
だが、病んでいる私、もう一眠りしなければ。
そう思い、意識がなくなるのをひたすら待った。
その間、頭の中には様々なことが浮かんでは消え、
人の脳の複雑さに悩まされた。
すると、とある幼い日、父と母と遠足に行った日の情景が蘇った。
海を見下ろす広い丘で、父がしきりに私にポーズを取るよう促している。
父はアロハシャツにカンカン帽、母は髪をスカーフでまとめていた。
「人様の迷惑になることはするな、法に逆らうことはするな」などと、
この世の常識を毎日のように繰り返し諭してくれた父。
おかげでこんな私でもどうにか生き続けられている。
その父が亡くなったのは、もともと止まらない咳と痰が原因だった。
いつの間にか意識が混濁してきて、現実との狭間も霞んでしまった。
「ほら、落ちるじゃないか、危ないよ」と、
父のひどくバリトン的な声がずっと前方で響いた時、
私は激しく咳込み、大汗をかいて目が覚めた。
ずっと夢を見ていたのだった。
そういえば昨夜は激しい雨が降っていた。
目覚めたらカーテンの隙間から日差しがさしていた。
今日は寝具類の洗濯をしよう。