天気が良かったので久しぶりに自転車で外出した。
いつもなら車で行く約5キロの道をペダルを漕いで走る。
どのぐらいで目的地へ着くのかなと思い、
出発時刻を忘れないようにした。
この自転車は震災の後、ガソリンがスタンドから消えてしまったとき、
売れ残っていた貴重な一台の自転車だった。
あれから八年も経ってしまい、自転車には滅多に乗ることはないが、
月に一度ぐらいは近くのスーパーに行くようにしている。
こうして長い距離を走らせることはほとんどなかった。
自転車だから普段の大通りは走らず、
それに並行して走る裏道を通った。
この裏道は突然田園地帯となり、人っ子ひとり通らない。
竹林には人の代わりに国鳥の美しい雄キジが鳴きながら歩き回り、
タケノコがたくさんこげ茶の三角帽子?を出していた。
「どうぞ」と言わんばかりにあちこちニョキニョキ出ているが、
昼日中(ひるひなか)盗むわけにもいかない。
田園を過ぎると古い一戸建ての貸家が並び、住民はおらず空き家ばかりだ。
いったいこれらの住宅群はどうなるのだろう。
そう案じつつ奥を覗くと、一人の老人が一坪ほどの畑を耕していた。
あの人だけが住み残っているのだろうか。
そのうち今風のしゃれた住宅街となり、
国道を横切ると町のメインストリートに辿り着く。
街路樹が青々と茂り出し、アメリカハナミズキが満開になっていた。
赤いツツジは盛りを終えて散り始めている。
歩道の脇にはパンジーやペチュニアなど色とりどりの花が飾られている。
メインストリートにも車の少ない裏道があって、静かな小道が続く。
水路の壁には自然に増えたのか、
見たことのないピンクの花が咲いていた。
目的の公園に車の倍の30分で着いた。
駐車場はいっぱいだ。
好天の連休だから家族連れで賑わっている。
車では通りすがりの春爛漫の景色をこれほど堪能はできない。
とすれば、歩くともっと発見があるだろう。
人はスピードとともに捨ててきたものが多いとあらためて思った。
さて、歩くとどのぐらいかかるだろうか。
今度は歩いてみよう。