汗をかいて目が覚めたら部屋はまだ暗かった。
カーテン越しの空も暗い。
電気を点けないままお布団の近くに置いていた赤いシャツを取ろうとしたら、
黒も赤も同じようで色の見分けがつかない。
洗濯ものをきれいに並べていたので、シャツは何枚かそばにあるはずだ。
だが、どうしたことだろう、色が分からなかった。
立ち上がって光をつけたら、ぱっと色が浮かび上がった。
赤いシャツは右手を長く伸ばしたところにあった。
ほかの動物は知らないが、人間は光がないと色を見極められないようだ。
そういえば前に山の中で日が落ちてしまったことがあった。
その日は新月の日で空が暗かった。
雑木林も杉の林もすべてが真っ黒になり、
土の茶色も小石のグレーも見分けがつかない。
歩く道さえ手探りして見つけるほどだった。
あの時は幸い小さな沢があって、水音を頼りに車に戻ることが出来たっけ。
今朝はそんなことを思い出しながら暗闇を見続けた。
ウトウトとしていると、いつの間にかいつもの色のある部屋に戻っていた。
庭の花も光あってこそ鮮やかな色を放つ。
とすると、私が見ている光の世界とは太陽のマジックなのか?
光と闇、色彩と無色、いったいどちらが本当の世界なのだろう。