
所属する趣味の会に参加していた年長の仲間が、
クラブを退くことになった。
20年以上もいたのだから、
本人はかなり辛い思いでやめることを決心したのだと思う。
私たちのグループはあくまでも趣味の会なので、
やめるのは本人の自由意思だ。
今までも何人かの人がそうしてきた。
それゆえに長くいたからと言って、
その人の不在を気にかけることはない。
当然やめると言っても、
親しい友以外には引き留めることさえしない。
でも、今回の仲間は私との関りも深く、
このクラブ以外でも親しく共に行動している。
だから、他の仲間を誘って、
何か慰労会のようなものを彼にして上げたかった。
仲良くしている仲間二人にそのことを伝えると、
二つ返事ですぐ翌日のお別れランチ会を了解してくれた。
当の本人にも連絡すると喜んで来ると言う。
気になっていたとある和食屋に予約を入れ、
本人の分は私たち三人で負担することにした。
1500円程度のランチなので、たいした金額ではない。
四人で集まり席に座ると、二人の友は小さな花束を本人に渡した。
出がけにお店に寄って買って来たらしい。
この二人は実に優しい仲間なのだ。
その心遣いに今日の主人公である彼は、
少し目を潤ませとても感激していた。
お店も自然な木の香りのする吹き抜けの造りで感じ良く、
ランチはこんなにと思うほど品が多彩で期待以上の食事だった。
店の名の付いた膳はこの店の数量限定のお得なランチらしく、
予約しないと食べることができない。
初めてのお店だったけれど、きっとこれから利用するだろう。
食べ終わって別れる時に、彼は私たちに小さなカードを渡した。
中に手書きの文字で感謝のメッセージが書かれていた。
いつこんなものを買いに行ったのだろう。
そして、大きな指でひとりひとりにメッセージを書いたのだろう。
恐る恐るカードの額面をみんなで確かめると、
何と私たちが負担した分の10倍もある買い物ギフトカードだった。
私がこんな送別ランチを思いつかなければ、
彼に無駄遣いをさせることはなかったのにと胸が痛んだ。
でも、彼はそれほど私たちの行為が嬉しかったのだと思う。
だから、彼の過分な配慮を素直に頂こうとみんなで納得し合い、
心もお腹も満たされた気持ちで店を後にした。