レンタルビデオ店で作った会員カード会社から、
『日帰りバス旅応募はがき』というものが送られてきた。
カラーで印刷されたその内容は、応募申し込みをすれば、
本人は何と無料で、同伴者は6000円で参加することができるとなっている。
こうした応募バス旅は、スーパーなどにも置いてあるらしく、
応募すればほとんどが当選するらしい。
参加者は中年以上の女性がほとんどだ。
一体どういう仕組みになっているのだろう。
このバス旅に仲の良い友達が夫婦でよく参加していて、
彼女によるとそのツアーには、
必ず高額な製品を売る契約工場の見学が入っており、
それをうまく交わすことができたらお得だという。
もちろん一人で参加し、勧誘に負けない強い自信があったら、
文字通りお金は一切かからない。
女性ひとりで数人は参加しているという。
だから、「一度行ってみたら?」と勧められた。
私は「ただより高いものはない」という主義なので、
そんな葉書は即ゴミ箱行きだったけれど、
今回はなぜかそのバス旅を経験してみたくなった。
その立ち寄り先の一つに行ったことのない場所があったせいもある。
近くに住む趣味の仲間にそのことを言うと、
彼女も何度も夫婦で参加したことがあると言った。
驚いた私は彼女に頼んで一緒に行ってもらうことにした。
もちろんその友人にも全く同じ応募はがきが来ていて、
各々投函すれば二人とも無料になるのだけれど、
同じバスで同じ席とは限らないから、
半分ずつ3000円を支払って行くことにした。
最寄りの集合場所に行くと、
続々と乗客がやって来て、最終的には満席だった。
観光バスには運転手とガイドが付き、
ひとりひとりに丁寧な挨拶をしてとてもソフトな接客だった。
車内で食品の予約販売などが数点あるが、
申し込みをしている客は少なかった。
乗客が40人ほどでほとんどが3000円を支払ったとすると、
収入は12万円ぐらいになる。
二人の乗員、高速道路料金、燃料費、駐車場代金、昼食代金など、
これらかかる費用でめいっぱいではないのかと頭を捻った。
さて、この格安すぎるバス旅、果たしてどんなものなのだろう。
避けられない工場見学、それに無料のランチとは?
しかも半分以上がリピーターなのである。
入り組んだ血脈のように絡み合う都会の高架道路を眺めながら、
興味本位と期待感が入り混じった高揚感のようなものが、
私の胸を交錯している。