魚コーナーの充実した大型スーパーに行ったら、
美味しそうな大トロが入った握り寿司が並べてあった。
日によって大トロがない時もあるから嬉しかった。
港のある街に育った私は魚には目がない。
だから、かえって期待外れが多く、
あまりスーパーでお刺身など買うことがない。
でも、この大トロは別格、見ただけでとろけそうだ。
そのパックには、大トロはたったひとつしか入っていないけれど、
他のネタも新鮮で魅力的だった。
1パック税込み1100円也というのも安い。
寿司屋のカウンターで食べたらと思うと嘘のような値段だ。
コロナの影響でずっと外食を避けている身としては、
大した散財でもないだろうと二人分を買い物かごに入れた。
ついでに中トロの並んだ贅沢な刺身も足して、
ちょっとリッチな夕食とすることにした。
プラゴミが増えるのは忍びないけれど、
何より贅沢と言えるのは料理をしなくて済むことと、
後片付けをしなくて良いことだ。
ディナーに必須のお酒は、いつも最安の発泡酒か雑穀酒で我慢している。
でも、つまみとのバランスも考え、久しぶりに「本物」ビールを選び、
更にスペイン産テンプラニーリョの2014年製赤ワインを買った。
黒ブドウのテンプラーニョは定かではないが、
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼道に、
ピノ・ロワールの挿し木を植えて増やしたとか言われている。
この巡礼道、近い将来歩いてみたかった。
そんな気持ちもあってか選んだワイン。
今、スペインは幾度目かのパンデミックに悩まされている。
テンプラーニョは実はフェニキア人の頃からあり、2000年の歴史がある。
ずっと紡がれ続けたブドウである。
最近は2リットル入りの安いテーブルワインをよく飲んでいるので、
コルク栓を開けるのは久しぶりだった。
ビールのほろ酔いと期待通りのお刺身を食べ、ワインにかかった。
ところが、この栓、コルク抜きは刺さったのに、
引き上げようとしてもビクとも動かない。
鋏や金づち、考えられるものの全てで抜こうとした。
それでもコルクの木は反抗しまくった。
悪戦苦闘が20分は続き、ついにはボロボロにして押し込むこととなった。
おかげで指が痛くてならず、ビールの酔いもすっ飛んでしまい、
お刺身の有難さも吹っ飛ぶところだった。
たまの贅沢だったのになあと苦笑いしながら、
コルクの浮くワイングラスを手にした。
だから、味がどうかなど分からず惜しいことをした。