旅③ 先祖のお墓参り
お墓参りに行ってこの地のお墓について考えた。
墓石の刻字にはどの家も金の色が塗りこめられていて、
他の地の人には理解しがたい光景になっている。
主な墓石の他に必ず小さな『土神』と書かれた石碑が立っている。
これは朱色に塗られている。
土神とは土地を土の神様から借りるので、祀るらしい。
それは、唐人屋敷町にある土神堂が町全体のお墓に広まったと言うが、
それほど中国の人たちの力が強かったのだと推測できる。
また、墓地には『無縁塔』もあって、
おそらくお墓の整備の時に出た土葬の時代の頃の遺骨を
まとめて供養しているのだと思う。
これは金色に塗られていた。
お参りする際の線香は竹の先に茶色の線香がついていて、
その長さは普通の線香の4倍ほどある。
緑色の普通の線香も入れるけれど竹線香が迫力を増す。
これも他所の地の人が見たら、「ここが日本か?」と疑うかもしれない。
人は祖先をお墓に祀り、自分がどこから来て何処へ行くのか確認して
心の安定を得る。
その場所としてのお墓の重要さは、
科学文明の発展した現代では考えられないだろう。
(女は先祖の墓には帰れない)
古いものを一掃し、無味乾燥な都市を作ることが、
人々をとどめさせ生き延びることの出来る都市計画だと思っているようだ。
この風光明媚で文化の香りが染みついている町も、
何れそんなふうに味気ない町になっていくかもしれない。
斜面に張り付く古い墓地のあちこちが更地になっている。
いわゆる今世間を賑わせている『墓じまい』なのだろう。
それだけ人々が去っていったのだ。