
夕方、スーパーに行ったら殻付きの牡蠣が売っていた。
長さが10センチほどもあり、かなり大きい。
それも夕方ということもあって、値段は半額になっている。
外国産ではなくれっきとした日本産だ。
牡蠣は2パックしか残っておらず、
当然何一つ悩まずに買い物かごに入れた。
今年はというより、今年も牡蠣は高価で、
わが家の食卓に上がったのは2度だけだった。
その時のメニューは鍋と、お決まりの牡蠣飯だ。
牡蠣のだしは海を強く感じさせてくれとても美味しい。
だから、手の出ない値の牡蠣を見ると、
満たされない悔しさで欲求不満になってしまう。
私は子供の頃から牡蠣が大好きだった。
海水浴に行った時は、
必ずのように岩に貼りついた牡蠣を石ころで割っては海水で洗い、
躊躇いなく口に入れて食べていた。
真夏なのにである。
大人になって海から離れてしまってからも、
港の岸壁や堤防に貼りついている牡蠣を見ると、
割って食べたい衝動に駆られたものだった。
それほど牡蠣が好きだったのに、
ある時、寿司屋の生け簀の牡蠣を食べた夜に、
強烈な吐き気に襲われる経験をしたことがあった。
この時の苦しさは長い間忘れることができず、
あんなに好きだった生牡蠣を食べることができなくなった。
パリの名物だった露店の生牡蠣屋も横目で通り過ぎ、
私の牡蠣恐怖の根は深かった。
それがやっと食べ始めたのは、
おそらく食中毒から10年は過ぎていたと思う。
出された生牡蠣の誘惑に負け、ついに口にしたのだ。
その夜、体の異常はなかったので、
それから牡蠣への執着は以前に戻った。
牡蠣の食べ頃の時期は英語でrの付く月だという。
つまり、9月(September)から4月(April)。
今日はもう5月である。
だから、半額600円と安いのか。
まさか生で食べる勇気はなく、
無水鍋に牡蠣を並べ簀の子を敷き、
殻が開いても十分に火を通して食べてみた。
これが一つでお腹がいっぱいになるようなボリュームがあって、
海のミルクも実感できた。
どうしてこんなに安かったのか不思議でならない。
たまたまだったのか、それとも5月の牡蠣だからなのか。
おかげで私の牡蠣への飢餓感みたいな思いは満たされたようだ。