朝から出かけた先日のこと、
夜に帰宅したら玄関に袋が置いてあった。
中を見ると野性味あふれるお蜜柑だった。
あきらかにスーパーで買った蜜柑ではない。
メモも入ってなかったけれど、きっとご近所さんのあの方だろう。
その人の庭には蜜柑の木があって、
今年は枝もたわわに黄色い実をつけている。
去年、その木に初めて沢山の実がなって、
私が感心していると「ちょっと酸っぱいよ」と言いながら、
ご主人が採って分けてくださった。
確かに去年の蜜柑は若いせいか酸味が強かった。
今年の味を想像していたら、意外にも甘いので驚いた。
時が経ち味が落ち着いてきたのだろうか。
録画されたドアフォンの画面に、うっすらとその人の姿が映っていた。
伝言はなかったけれど、蜜柑の主はあの人に違いない。
御礼を言いに行きたいけれど、駐車場に車はなかった。
また彼はしばらく帰ってこない。
家族を残して離れた地に行っているからだ。
蜜柑を齧ると、その人の顔が浮かんだ。