自転車で走る国道の裏通りには、広い畑や荒れ地が広がっている。
人の住まなくなった貸家の群れの細道には暗い竹林がある。
そこに美しい国鳥のキジも独特のだみ声を放ちながらうろついてたりする。
先日久しぶりに自転車で通った時、
食べ頃のタケノコがニョキニョキと頭を出していた。
誰もいない山の中なら掘って採るところだけれど、
さすがにここは町中だ。
でも、舗装道路に飛び出したタケノコには所有権がない。
かといって昼ひなかに固い舗装面から抜くわけにもいかない。
そんなわけで気になっていた。
今日、図書館の帰りにその竹林に人がいた。
カーンカーンと奥の方から音がするので、
自転車を止めてタケノコを掘っている男性に大声で呼びかけた。
「タケノコ譲ってくださーい」と。
よれよれの作業着姿の農夫とおぼしき男性が、
鍬のようなものを持って近づいてきた。
どうやら毎日八百屋かスーパーに卸しているらしい。
それほど多くのタケノコが出ていた。
4本1000円だというので、大小のものを掘ってもらった。
竹は一日で2m以上も伸びるらしい。
お金を払おうとお財布を見たら1万円札しかなかったので、
連絡先を書いて後で持って行くと言ったら、
何日か今の時間に掘っているから明日でも明後日でもいいと言われた。
自転車の籠にタケノコを入れて走ったのは人生初体験のことだった。
猛スピードでペダルを漕いで、家からお金を持ってきて、
林の奥で作業をしていた農夫さんに渡した。
タケノコは帰宅後すぐに大鍋で湯を沸かし、わずかな重層で茹でた。
掘り立ては確かに言われる通りアクが少なかった。
けれど、あまりにもたくさんあってどうしたらいいんだろう。