友達と待ち合わせした隣町の図書館で興味のある本を見つけた。
それは「アマゾンおケイの肖像」というブラジル移民に関しての本だ。
作者は主人公おケイの息子で、最近よくテレビに出ている人だった。
その彼が母親の話を聞き、その一生を本にしたのである。
歴史の中から消えてしまったかのような移民の歴史を、
母親の稀有な一生を通じて描いている。
日本は1908年から10数万人の人々が南米などに渡っている。
殆どが新天地を求めた農家の次男三男だった。
そこで、開拓やコーヒー栽培などの農業発展に尽くしたが、
当初は奴隷同様の待遇だったらしい。
そんな中で作者の母は13歳で叔父夫婦とともに移民船に乗った。
当時は子連れ家族での移民しかできなかったようだ。
船は50日もかかって神戸からシンガポール、
排泄物の悪臭がまとわりつく蚕部屋のような部屋で、
人々はごった返していた。
それでも気丈に過ごすことができた主人公はブラジルに渡っても、
2年の労働を終えるとひとり飛び出し、線路を歩いて都会へ行く。
ページを進めていくうちに、
この人の積極的な努力と強運さに圧倒された。
逆境の中でも這い上がっていく強い気力と運の強さは、
どうやらこの家の家系的なものもあるようだ。
息子である作者は、今や近現代史の中で忘れられた移民政策を、
棄民政策であったことを浮き彫りにしている。
自分の母親の伝記とはいえ、
その時代的背景や資料の研究は並大抵ではなかっただろう。
移民について何も知らなかった私はこの本のおかげで、
日本の近現代史、あるいは世界のそれを勉強し直させられている。
良い本とはそんなものだ。