友達と水田の道を散歩した。
秋の稲穂が下を向いている。
どうやら収穫間近らしい。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺は今もよく。
つい知ったかぶりして口に出した。
なるほどなあと思いながら前を歩く友達を追った。
親が農家だった彼女に今年の出来はどうかと尋ねると、
一つ一つの水田に実った穂の付き方の違いを教えてくれた。
「ここはちょっとまだ」「ここは大分豊作」と。
私が見たらどれも変わらないと思うのに、
さすがに農家で育った人は違う。
私は街育ちなので畑など子供の頃目にしたのは、
遠足の時だけだった。
足元のあぜ道には除草剤がびっしりとまかれていて、
まるで焼け跡のようになっている。
「凄い薬の量だわ」と友達が言う。
なるほど水田の中には、
まばらに稗がツーンと頭を出しているだけだ。
除草剤をまかなかった昔は、稗を取るのが一苦労だったらしい。
美しい日本の田の風景だけれど、
それを取り巻く環境は大きく変わった。