散歩していたら珍しい白い花があった。
枝や葉をよく見ると、春の野山を明るく彩るヤマブキと同じ形をしている。
ヤマブキは街育ちの私でさえ小さいころから馴染がある花だ。
その黄色い花びらを集めてグラスに入れ、
水を混ぜて蜜柑の缶詰を想い作った。
蜜柑の缶詰は風邪を引いた時にしか食べられなかったから、
その甘い汁を想像しては遊んでいた。
花が白かったらどうしただろう。
太田道灌に蓑を差し出せなかった村の娘の話を思い出した。
「実のひとつだに」の「実の」と雨をよける「蓑」をかけた有名な話。
七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき
確かに花はあれほどたくさんつくのに実はならない。
地面をよく見ると根元には胡椒粒大の種がいくつも落ちていたので、
実はないけれどちゃんと種は出来るのだ。
ただ果肉がないだけのようだ。
そばには何本も小さな芽が出ているので、
そっとビニール袋に入れて持ち帰った。
さて、白いヤマブキの花は咲いてくれるだろうか。