
この日は塗装工事の最後の仕上げの日で、
大工さんが総仕上げをしている時だった。
工事には私が立ち会って、夫は隣市に向かい愛車の軽自動車で外出した。
これは長く続けて来たわが家の変わらぬ日常のことである。
ところが、私と大工さんがあれこれと話している時、
夫から突然電話が入った。
外出して10分ぐらい経った時だったか。
何だろう?とスマフォを取ると、
いきなり「ぶつけられた! ここに迎えに来てくれ」と、上ずった声で言う。
私はひどく驚いてすぐに家の鍵を締め、現場に走って行った。
すると、T字路の信号交差点の先に夫の車と大型トラックが止まっていて、
お巡りさんが二人に事故について聴取していた。
何より心配だった夫のケガは電話で確認した通り、
見た感じ足を引きずる程度の軽症のようで、
胸を撫でおろしたが、
車はボンネットから運転席まで無残に破壊されていた。
当の信号無視の運転手は、
「信号があるとは知らなかった」と、すぐに自分の非を認めたという。
お巡りさんにそのことを言うと、
報告書には理由は書かないと言うから驚いた。
民事だからだろうか。
レッカー車が来るまで一度自宅に戻り、
大工さんに慌てて説明して再び夫の待つ現場に行くと、
既にトラックはなく、夫の手に一枚の名刺があるだけだった。
相手は社名を書いたトラックで、
警察も立ち会ったので不安はなかったけれど、
その場で保険会社を告げた様子もなく、
帰宅しても謝罪の電話一つもなかった。
夫も動転していて深く相手に説明を求めなかったようだ。
おかげで被害者のこちらはディーラーに電話して何をすべきか聞く始末で、
こちらの保険会社に事故報告をした。
すると、相手の保険会社と連絡を取りたいから教えて欲しいと言う。
そこで相手の会社の社長に電話をして保険会社を聞く。
渡された名刺はぶつけた本人ではなく社長の名刺だった。
何から何まで対応がおかしい。
普通なら事故時に被害者の目の前で保険会社に連絡するのが常識ではないか。
トラックは左端部分に少しだけ傷があったが、
こすっているような感じで大したものではなかった。
軽自動車と大型トラックの強度の差はこうも違う。
でも、夫の状態が深刻でなくて本当に良かった。
事故は好きで起こすものではなく、
相手の信号無視もわざとではないに決まっている。
よそ見をしていたか眠っていたのか魔が差したのだろう。
大事故ではないからか、お巡りさんはその点を正そうとはしなかった。
私たちは何一つ責めの言葉は言っていない。
車が駄目になっても相手の保険が何とかしてくれるだろう。
それよりもとにかくまずは病院に行かなければ。