
ベランダにセミがひっくり返っていた。
よく見ると足をバタバタさせているので死んではいなかった。
可哀そうなのでヘチマの葉を敷いてセミをそっと乗せてみた。
目を近づけると罪のない愛らしい目をしている。
動く様子を写そうと前掛けからスマフォを取りだし、構えたら、
勢いよく音を立て羽ばたき、
あっという間に空へ飛んで行ってしまった。
良かった、セミの寿命は短いというから、
せめてギリギリまで生きてほしい。
あのセミはきっと水辺公園の森にたどり着くだろう。
いや、その途中の鬱蒼とした屋敷森で一生を終えるかもしれない。
いずれにしても寿命を全うしてくれる。
家の居間の棚にはセミの死骸が飾ってある。
庭のテーブルに乗っていたのを私が部屋に持ってきたのだ。
セミにしろ他の生き物にしろ、
最近の私は以前と違ってその存在にひどく心を奪われる。
苦手だったカマキリでさえ、
じっと見ていると涙が浮かんでくる。
実は、この現象は全てこの世からいなくなった、
コッコたちを思い出させるからなのだ。
本来なら8年は生きるのに、
半年足らずで終わらせてしまった命。
私の都合でそうなったので、
これからもずっと悲しみは癒えない気がする。