
仲間の一人が電車にリュックを置き忘れ、
結局は誰かに盗まれて出てこなかったのだけれど、
その日は予定通りに高原に向かった。
そこには仲間の大好きな花があって、
もう何年も前からそれを見に行きたがっていたのだった。
花は咲く時期が限られ、その花の場合、大体6月下旬が適期だ。
でも、この時期は雨も多く、
またお互いの都合を合わせるのも簡単ではなくて、
なかなか実現できないでいた。
時は7月に入り、花の時期は終わってはいたけれど、
もしかしたらと一縷(いちる)の望みを抱いて、
私がかつて知る山道に彼らを連れて行ったのだった。
ところが、何度も行ったことがある道なのに、
なぜかしばらくすると道がなくなった。
四方八方進んでみたけれど、
道らしきところはなく、すぐに藪に囲まれてしまう。
ついに、その花を見た斜面に行きつけなかった。
仕方なく戻っていたら、時期外れなのに立派なワラビがあって、
結局はそこでワラビ採りをすることになった。
ほんの30分ほどで山のようにワラビが採れ、
私たちはそれを仲間で分けて新聞紙にくるんだ。
友達はお花が見られなくて残念そうだったが、
この大量の収穫で気を取り直した。
それでも私は自分の記憶を確かめたくて、
彼女たちに休んでもらって先行の登山者がいたので、
別の道からその人たちの後を追うようにひとり山に入った。
そこには記憶にあった水のない沢があって、
さきほどは登山口を間違えたのだ。
もしかしたらこの先には花もあるのではないかと期待した。
ところが、歩を進めるうちにまた道がなくなってしまった。
藪に囲まれどこも進めないのだ。
先ほどの二人組はどこを進んで行ったのだろうか、
足跡もなかった。
30分ほど道を探し回ったけれど先へ進めなかった。
それから、今度は遠く場所を変えることにして、
その高原の裏側にある違うS山の登山口に向かった。
でも、そこから1時間ほども車を走らせたというのに、
S山の登山口にもたどり着けず、
仕方なくカンカン照りの中、お宮の木陰でお昼ご飯にした。
この日は友のリュックも見つからず、
彼らの久恋の花も見つけられなかった。
私は覚えていたはずの登山道も見つけることができず、
もう一つのS山の登山口にも行きつけなかった。
ただ想定外のワラビの収穫があったのが大きな救いだ。

(写真下 出合えなかったクサタチバナ)