今日は人生初めての日だったなんて

好奇心がある限り心を文字で表すことは大切です。日記を書きます。

物語の記憶は受け継がれない

 

日本中の建築物や橋、道路、その他インフラにかかわるものが、

いよいよ老朽化して建て替えの時期に入っている。

先日は少し遠出をしてアーチ橋の建て替え工事現場を見て来た。

 

この橋は約90年前頃にかけられたもので、

3連のアーチはこの町のシンボルになっていた。

だか、老朽化のために数年かけて新しく生まれ変わるという。

 

3連のアーチは両端にあるため2対になっており、

これを巨大クレーンで持ち上げるため3っつに切断された。

合計6個の巨大アーチを巨大クレーンが河川敷に下ろしたらしい。

 

この間、この大事業を記念して花火大会などのイベントが続き、

工事の見物人も続々と訪れ、観光にも一役買っているらしい。

総工費は国、県、市で合わせて107億円だとか。

 

今はもう橋を歩けないので、

駅から対岸に渡るには歩行者と自転車用に小さな道が、

階段とスロープで川底に降りて渡ることができるようになっている。

 

そこを歩いていたら付近の住民のおばあさんが熱心に橋を眺め、

横にいた私に親しく話しかけて来た。

「私と同じ年なのよ。見なくちゃね」と言った。

 

88歳のおばあさん、88年の橋、何と偶然ではないか。

その間、この両者には夥しい物語があったに違いない。

とはいえ、数年後に新しく姿を現すであろう橋は、

88年の物語を記憶することなくまた新たな歴史を刻むのか。

 

88歳の女性は何れこの世からいなくなり、

彼女の物語も彼女を知る数人の人がいなくなると消え去っていく。

アーチのなくなった橋を感慨深げに見つめている女性の、

皺だらけの横顔を見つめながら、時というもの虚しさを思った。