函館の旅②
新函館駅から函館までは既存の在来線に乗り継がなければならない。
事前に調べた情報では半時間もかからず便も多いので、
ホテルは新幹線の駅にしておいた。
ホテルは日替わりで選べるのだが毎日荷物を移動するのは不便だ。
通勤電車のような車内に乗り込むとボックス席があって、
空いていた席に乗り込んだ。
そこにはひとりの女性が座っていた。
私と友人は山に行くと必ず知らない人と話をするので、
その隣の女性にも親しく声をかけた。
その人は旅人の私たちに親切に函館について話してくれた。
私が歩いて函館山に行くと言うと、
その人もロープウェイは使ったことがないという。
そして、市内の用を済ませたら私たちの後を追ってくると言うのだ。
何て親切な人なのだろう。
経路は事前に調べていたけれど、
旅は道連れ、できるなら現地人?と一緒に過ごしたい。
その方が町を深く知ることができて忘れられない旅になるに決まっている。
彼女も同じような旅が好きらしくひどく話が合う。
私たちは仙台で買ったサンドイッチを食べながら、
市電乗り場までついて来た彼女と別れ、
登山口近くの電停に降りた。
広い通りの続くしゃれた家々の目立つ坂道を登り、
目指す「旧登山道コース」を探し、それらしい山に入る。
そこは運動靴でも登ることのできるような山道だった。
帰りが大雨になったという旭岳に行ってきたという山好きのオーストラリア人夫婦と、
時折片言の英語で話しながら、
雪虫の飛びかう木々の間を山頂へ向かう。
今年の紅葉はどうもぱっとせず、
枯れたまま落葉している木がほとんどだった。
眼下には独特な形で町が広がっている。
函館市は同じ夜景のきれいな坂の町の私の故郷とは全く異なる平野の町だ。
ここは夜にバスやロープウェイで人が押し寄せる場所らしいが、
昼間はモノ好きのハイカーがぽつぽつといるだけだった。
友達は夜景を見たいに違いないので、
いったん町に下ってからバスに乗って再び山頂へ行く案を思いついた。
電車の彼女から連絡が入ったので、
そのことを伝えると彼女も行くというので、
観光客の目立つ函館ハリスと正教会あたりで待ち合わせした。
バスはくねくねと高度を上げながら走り、
運転手が夜景が見えるポイントをいくつか紹介してくれた。
昼間と違ってもう何台ものバスが並び、別世界になっている。
彼女の説明によると、
最近はインバウンドとやらで観光客が増えて、
夜景を見る隙間もできないほどらしい。
この日は透き通った光の散りばまれた美しい夜景を鑑賞でき、
ちゃんと何枚も写真を撮ることもできた。
こんな日は珍しくどうやら私たちは幸運だったようだ。
帰りのバスには数珠つなぎで客が並んでいたが、
ぎゅうぎゅう詰めに押し込められたのでそれほど待たなくて済んだ。
ただし、満員の車内でバスに揺られ続けて、
久しぶりに車酔いをしてしまう。
案内してくれた彼女には申し訳なかったけれど、
夕食はコンビニで買うとして、食事に行くという彼女と別れた。
彼女は来月に上京するので、その時は連絡を取り合おうと約束した。