スーパーの鮮魚コーナーに新鮮なイトヨリが売られていた。
淡いピンクに黄色い線が特徴のこの美しい魚は、
西の方では良く見るけれど、関東地方ではあまり見かけない。
小さい頃、よく食べていたので懐かしく、
早速買ってきて翌日の朝に塩焼きにした。
甘い白身の柔らかい肉には小骨が多く、
口に入れるまでにしっかりと骨を探さなければ、
喉に引っかかってしまう。
だから、とても注意深く口の中に入れたのだけど、
何と最初の一口目にチクリと骨の刺さった痛みがした。
喉に刺さった骨はご飯を噛まずに飲み込んだら、
大抵のものは取れるはずだったのに、ずっと痛みが続いた。
鏡で喉の中を覗いたり、
吐げそうになるのを我慢して指で喉の奥まで探したりしても、
1時間ほど経っても息を呑むと小骨独特のチクリとした痛みが続いた。
仕方なく近くに開業したばかりの耳鼻咽喉科へ歩いて行った。
土曜日だったせいか朝から超満員で、
辺りの人っ子一人いないような住宅街とは雲泥の差だった。
案外早く1時間ほど待って番が来たので医者に事情を説明した。
すると、若い医者は私が言った場所辺りを光を当てて診察した。
骨が見えないと取れないと言われ、ドキッとしたけれど、
鼻からファイバースコープを入れると言う。
すると、骨が見つかり医者はピンセットでそれを抜き、
ガーゼに包んで見せてくれた。
それはとても細くて長さは1センチほどだった。
記念に持っていくように言われ、持ち帰ってよく見ると、
イトヨリの小骨はしなやかで弾力性があった。
そのためご飯を飲んでも折れずずっと刺さったままだったのだ。
1尾200円と格安の肴だったけれど、
初診料とファイバースコープ料、そして、手術(骨抜き)ということで、
2,900円の請求だった。
イトヨリは高級魚とあって実に高価な朝食となった。