列車の旅をすると、ホームに立ち食いソバのお店を見かけることがある。
以前はちよっとした駅には必ずのようにあったけれど、
最近はかなり減ったような気がする。
もっとも普段は電車など利用しないからそう思うのだろうけれど、
あの独特なホームに漂う暖かな匂いはとても懐かしい。
だから、立ち寄って食べたいと思う。
ところが、残念ながらその店を見る時は時間のない乗り換え時だったり、
そうでなくても食事をしてお腹がいっぱいの時ばかりだ。
だから、いつになってもささやかな夢が実現しない。
その内にお店は閉店してチャンスはなくなり、
ただの記憶だけになってしまう。
そんな気がして残念でならない。
都会にいた頃はよく食べていた。
電車と電車の合間にふと寄ってしまい、
フーフー言いながら麺をすくい、
忙し気に箸を持つおじさんたちと並んで食べていた。
別にどうという味でもないのに、
真っ黒い汁に大ねぎの刻んだ薬味を乗せ赤い唐辛子を振って、
まずは汁を吸った。
お金がある時は天ぷらを乗せたっけ。
もちろん私はお蕎麦ではなくうどん党だ。
初めてそれを食べた時は仰天した。
西の生まれの私は麺の汁は透き通っているし、
緑のネギは細いワケギと決まっていた。
大ネギはすき焼きの時以外食べたことはなかった。
でも、段々とそれに慣れて来た。
今はどちらの汁も薬味も好きである。
都会を離れ地方に住むようになってからは、
旅先でしか見かけなくなった立ち食いソバ屋は非日常で、
私にしてみれば何となく憧れにの存在になった。
なのに、今回の長旅でも食べ損ねてしまった。
いつになったら立ち食いソバ屋に寄ることができるのだろうか。
今度は立ち食いソバ屋によるという目的で旅をしようか。
そんなことまで思っている。