今年の夏の暑さは九月半ばになっても一向に衰えず、
恐ろしいほど汗が吹き出る日が続いている。
そんな中、友達を誘って小一時間ほど車で走った場所にある里山を歩いて来た。
往復4時間ぐらいで300mほどの小さな山だ。
先月にもその友達と同じような標高の低山を歩いた時、
そこが岩の剥きだした尾根続きの道だったので、
かんかん照りの苦しさに耐えられず、早々に引き返したことがあった。
あの時は後でみんなに呆れられたものだった。
今日はその反省もあって、樹林の続く道を選んだ。
何れにしても家にいるより快適なのだから。
そう、どんなに暑くても、
自然の中にいさえすればひどく心が癒される。
実は友達は冷房の効いたモールに行きたいと言ったのだけれど。
登山口から民家のある畑の道を通り抜け、
イノシシの金網柵の紐をほどき、
ちょろちょろとした水の流れる沢沿いの道に入る。
辺りは鬱蒼とした深い緑の木々で囲まれている。
ここから日差しは遮られているものの、
蒸し蒸しとした暑さは相当なものだった。
一歩一歩歩くたびに額の汗が目に沁み、その塩分で涙が滲んだ。
家にいても汗が目に沁みるという体験をこの夏は幾度となく経験した。
汗かきの彼女はぴったりとした下着を着ていて、
まるで昔のスキースタイルのようにシャツの中にタオルを入れている。
それに、着換えも持ってきており、何度も着換えようとした。
山を始めたばかりで山歩きの基本を良く知らないのだ。
私は登山用のシャツ1枚だけを着ていて、
歩いている間、何度も濡れては乾きを繰り返している。
これが登山の基本スタイルだ。
私も何も知らなかった頃は、
彼女のように汗でシャツが濡れるたびに着換えていた。
そのため3枚はリュックに着替えを入れていたっけ。
でも、ある時、先鋭の登山家の知人と歩いた時、
「濡れた服は着ながら乾かすものだ」と、
強くアドバイスされたのだった。
それ以来、大分高価だけれど乾きやすい山のシャツを買いこんで、
半日ほどの歩きには着替えは持って来ない。
荷物はできるだけ少ない方が良いからだ。
私に連れられ一緒に歩く友達は、
私のアドバイスに素直に従ってくれるのに、
汗かき対策だけは聞き入れてくれない。
自分は物凄い汗かきなのだからと。
いつになったら分かってくれるだろうか。
というより、こんな暑い日に山に誘う私がおかしいに決まっている。