大都会の奥地に秘密の避暑地?がある。
そこは多摩川の支流のそのまた支流で、
人間の血流で言えば毛細血管みたいな小さな川だ。
夏になると私も小さな子たちの川遊びに誘われる。
近隣の川のほとんどが川べりのある場所は、
私有地なのか有料のキャンプ場が営まれていて、
賑やかにイベントが行われていたりする。
川といえば私の思い違いかもしれないが、
大昔から「川原乞食」という呼び名があるように、
確か個人の所有ではなかったはずなのに、
最近はなぜかとこもかしこも勝手に入れない。
そんな意味ではこの秘密の場所は、
近くにうるさい所有者らしき人間もおらず、
道脇には車も止めておくことができる。
対岸のあちこちにヤマユリも開き、美しいトンボも水面を飛んでいる。
じっと座っていても自然と一体化している気分で心が洗われる。
自由に遊ぶには持って来いだ。
しかも、清流とまではいかないのに、
魚がたくさん泳いでいるのである。
一番乗りしたA君はいきなり岩陰に手を突っ込んで、
大きな魚を続けざまに三匹、目の前で捕まえた。
彼の話によると、
ここで遊べば夕ご飯のメインディッシュが獲れるというのだから、
信じられない素敵な秘密の場所ではないか。
ただし、魚を手づかみで獲ることは難しく、
普通の人間にはできない芸当だ。
小さな子は膝ほどの深さの水に浮き輪で浮き、
水の苦手な私は川辺に座って新聞を読む。
町は激烈な暑さでまさに火を吹いているのに、
ここでは涼風が全身をさわやかにしてくれる。
自然の中で「自然に遊ぶ」ということが難しくなった昨今、
ここは本当に有難い。別天地である。