一時間ほどの工場見学を終え、
バスは再び高速道路を経て、
お昼を用意される料理店のある都心に戻った。
昼食だというのにすでに3時を過ぎている。
案内された小さな店には、
人数分の食事がすぐに大皿にて用意された。
それらを白い小皿に取り分ける。
おかず3品とスープ、ご飯、デザートだったが、
味は良かったけれど量的に満足できなかった。
喉が渇いていたので私がビールを注文すると、
数人の人がそれに習った。
この代金で店が潤うとは思えないけれど、
少しは儲かるのだろうか。
私たちは二人でこうして会うことは滅多にないので、
途切れなくよくしゃべっていたけれど、
隣の親子らしい二人は会話が全くなかった。
バスの隣席の夫婦も会話がなかった。
何をしにこの人たちは来ているのだろう。
何が楽しくて来ているのだろう。
私と同じく恐いもの見たさか。
いやそんなことはない、リピーターが多いのだから。
つまり、きっと生活に変化が欲しいからではないか。
たとえ夫婦でも親子でも家ではなくどこかへ行って、
環境を変えたいのだ。
そうすれば日常でも非日常を体験できる。
それが安ければ何回もできてなおさらだ。
人間にとって非日常は、
つつがない日常を送るためのリセットなのである。
そんなことを思いながらビールを飲んだ私だった。