バスは上野に着くまでどこかのパーキングエリアに寄った。
15分ほどのトイレ休憩だ。
私は滅多に高速を利用しないので、そこは初めての場所だった。
知らない場所に降り立つのは少し非日常の体験になる。
機能的で清潔なトイレや案内所があって、
室内には子供たちが遊ぶコーナーもあり、
とても広くて、至れり、尽くせりという感じだ。
きっと日本中のパーキングエリアも同じようなものなのだろう。
こんな時、日本は豊かなのだなとつくづく思う。
海外のパーキングエリアなど、
ガソリンスタンドに併設された小汚いところばかりで、
ひとりで立ち寄ると身の危険さえ感じるのに。
再びバスに乗り込み、最初の目的地上野公園を目指す。
道は混んでいていつもより30分ほど遅れているらしいが、
乗客たちは友達同士でおしゃべりを楽しんでいて、
窓の景色もランチの遅れも気にしていない。
隣の夫婦などは乗車時からひとことの会話もなく座っている。
かんかん照りの上野ではさすがに散策する気分になれず、
馴染み深い西洋美術館に行ってきた。
公園は相変わらずの人込みだけれど、
美術館の中は静寂そのもので空調も心地よい。
そのため私は喧騒の上野を訪れた時はよく立ち寄る。
絵画に興味のない友達も私について常設展を鑑賞した。
バスはすぐ近くに止まっているから40分ほどいることができた。
普段は電車でよく来るところなので、
バスに戻るのが何となく不思議な気がする。
これも非日常体験と言えよう。
上野を出発すると、
バスは林立する高層ビルの合間を縫うように西へ西へと向かった。
いよいよこのバス旅のメインイベントである工場見学だ。
都心を離れ湾岸沿いを走り、2時間以上の移動だった。