朝から大雨が降っていた。
駅まで行く間、歩道には靴が浸かるほど水が溜まり、
車道からは水しぶき烈しくズボンに降りかかる。
折りたたみ傘が飛ばされないようしっかりつかんで歩かねば進めない。
少し前に隣の市が線状降水帯に覆われたらしく、
そんな中で電車が動くのかと案じていたが、
構内では何のアナウンスもないので改札に入った。
心配した通り4駅ほど走ると電車は止まり、
スマフォから緊急速報の音が響いた。
乗客は少なかったけれど、全員のスマフォからブザーが鳴り、
いかにも緊急事態という雰囲気だった。
地震では何度も経験したけれど、緊急避難の警告は初めてのことだ。
確かに車窓から見た川の流れが尋常ではないほどで、
列車が緊急停止したのはあり得ることだった。
車内放送によると、雨が規定量を超えたから上下線とも止まっているという。
しばらくすると戻る電車は動いたけれど、いつか解除されるかと思い、
濡れたズボンを擦りながらそのまま1時間半ほど我慢して待った。
30分ほどで新幹線は動き出したとアナウンスがあった。
なのに、在来線のこの電車はまだ線路の点検もしていないなどと言う。]
そのアナウンスは数分おきに何度も繰り返された。
そのうち復旧は3時過ぎになるとか。
クーラーは入ったままなので体中が冷えていた。
このままでは風邪を引いてしまう。
我慢できなくなった私は、ついに発駅へ戻ることにした。
皮肉なことに駅に戻ると、列車は動き出したようだ。
あのアナウンスは何だったのか。
しかも、約2時間も在来線は止まったのに、
新幹線はたったの30分ほどで点検が終わっている。
普通切符の買いづらさと言い、こうした非常事態の対処と言い、
鉄道会社の姿勢は利益優先だとよくわかる。
私のような在来線利用の少数派はますます旅がやりづらくなる。
時代遅れの詩を思い出した。