水辺公園を歩いた帰りのこと、家の近くでひとりの女性が涼んでいた。
最近は知っている人にも目を逸らして挨拶をしない風潮だが、
この方は「こんにちわ、暑いですね」と、珍しく挨拶をしてきた。
蒸し暑い夏なのに首には木綿のスカーフをして、
おしゃれな麻の服にロングスカートという出で立ち。
背の高い上品な女性、それが、私の第一印象だった。
この道は月に1,2度通るのに、今日初めてその人と会った。
話の好きな人で、彼女は必ず夕方にここら辺りを少し散歩して、
今腰掛けているベンチで一休みをするのだそうだ。
心臓の手術をして、5キロも歩いてきた私と違い、
散歩は200メートルほどしかできないらしい。
何故か私も立ち止まって長話をしてしまった。
音楽の趣味が一致し、
そのせいもあって立ち話は私の故郷についてまで及んだからである。
彼女は私の好きな歌手が好きで、私の故郷が好きだった。
私の故郷には魅せられて3度も旅したという。
全く見ず知らずの人にここまでというぐらい、
その人は自分のことを話した。
この町では自分はどうやら飛び過ぎているという。
すっ飛んでるとも言った。
確かにかなりの進歩的な人で、
その語り口に常識にとらわれない自由さがあった。
感性が似ているのだ。
私も本来そういうところがある。
「いい人に出会ったわ」と彼女は言い、
別れ際に自分の家を教えてくれた。
あの角を曲がり、コンビニの先の百日紅の木のボロ家だと言う。
通る時は声をかけてと言った。
少し嬉しくなった散歩だった。