とある街を歩いていたら、風にはためく幟に首を傾げた。
「日本 営業中」と書かれてあるのだ。
なかなかユニークな文言ではないか。
じっと眺めていると、それは私が裏側から見ているだけのことで、
「本日」が「日本」に読めただけのことなのだった。
そこはパチンコ屋さんらしく、
敷地の入り口にたくさんこの幟が立っていた。
真っ赤な大きな幟が『日本 営業中』と折からの強風にあおられ、
華々しく揺れている。
『日本 営業中』というそれぞれの五つの漢字は全てが左右対称である。
だから、裏から見ても漢字としては成り立っている。
『日本』と『本日』はどちらもひっくり返しても意味を成している。
私にはこうした時、自分なりに解釈する癖がある。
『日本 営業中』という文など非現実的なのに、
「ほぉ、今日も日本は営業しているのか、確かに」と、
一瞬最初は理解した。
こんなことは私にはよくある。
これは一種の思い込みの強さから来るものなのだろう。
ただ、日本の文字は昔はアラビア文字と同様に、
右から左へと読んでいたから、
その名残でタクシー会社の名前など右から書かれているのもある。
私は左から読む現代人なので読み違えたのだった。
だが、どうだろう。
これを見た人の中で、
私のように日本が営業中と思う人は一体どれほどいるのだろうか。