山の天気は変わりやすい。
ジャンボタクシーでスキー場に着いたのは正午ちょうど。
そこから3時間ほど歩けば小屋に着く。
その時は風もなく真っ青な空だった。
スキー客の間を縫って登山口へ進み、そこでアイゼンを装着する。
スパッツも上着も駅の待ち時間に着こんでいた。
アイゼンは手持ちの6本爪のものでは危険なので、
今回は遠くに住む友人から10本爪のものを送ってもらった。
友人は山の先輩なので冬山新参者の私に、
他の用品も色々入れて送ってくれた。
その中にはピッケルが2本あった。
去年は2本のストックで登ったので、
一応軽い方のピッケルとストックを持ってきた。
登山口からいきなりの深雪となり、右手にストックを持って歩く。
木々に残る雪の造形が自然のなせる技と思うと、
自然は最高の芸術家に思える。
見上げると白い嶺が青い空に映えて光り輝いている。
雪景色を堪能して歩いていたが、
目的地の小屋に近づくころ、雲行きが怪しくなった。
しばらく急斜面のトラバース道が続くあたりだ。
神経を使いながら一歩一歩進む。
先頭を行くリーダーと最後尾を歩く副リーダーが、
落ちたら下まで行ってしまうので、
気を付けるようにと言った。
確かに斜面側に躓いたら身を止めることはできないだろう。
トラバース道をどうにかやり過ごし、小屋の屋根が見えてホッとした頃、
吹き飛ばされるような強風になった。
身体をかがめ風の収まるのを待つ。
それを数回繰り返し、転がるように小屋のテラスに着く。
もし、明日もこの天気が続いたら、
山はホワイトアウトになって頂上へは行けない。
山の天気は変わりやすい。
さて、明日はどうなるだろう。
小屋の窓から吹雪の外を見つめ好天を祈った。