12月5日 ⑦
いつか乗りたいと思っていた島原鉄道に乗ってきた。
黄色い色をした1両編成の可愛いバスのような電車。
この路線には日本で一番海に近い駅というのがあって、
鉄道ファンらしき人が三脚を立てて撮影していた。
確かにホームの下はすぐ海になっている。
下りたいけれど、次の電車はしばらく来ない。
仕方なく窓から写真を撮った。
この国にはこんなふうにまだまだ行ったことのないところが多くあって、
つくづく広いなあと思う。
残り少ない日々だけれど、出来る限り色んな場所に行ってみたい。
せっかくだから終点まで乗っていくことにした。
1時間に1本あるので、そこでお昼を食べてから、
日本名水百選になっている名水の町島原に戻って観光しよう。
フェリー乗り場まで散歩した後、駅近くの食堂に入った。
何の変哲もない地方の食堂のようだ。
暖簾をくぐると寿司屋のカウンターがあった。
奥からにこやかに出てきた女主人が気持ちよく接待してくれ、
注文した食事を作ってくれた。
壁には黒煙の上がる普賢岳の古い写真があって、
彼女は噴火の時の様々な話をしてくれた。
どうやらここも福島と同じように、
補償される人々とされなかった人々の間に深い溝が生じたらしい。
天災などが起こるとどこにでもある話だけれど、
その最中にいる時はとても切なかったという。
彼女は私が今は旅ゆえホテル暮らしだから、
野菜が不足していると言うと、奥から色々持ってきた。
トマトやミカン、それにレタスなどを置き、
遠慮せずどんどん食べてと言った。
採れたてだし土地も良いのか、とても美味しかった。
そして、帰りしなには、
それらをラップに包み袋に入れて持たせてくれた。
ただの通りすがりの客なのに、
こうしてお土産までも頂いたのである。
少し重くなったリュックを背負い、
清らかな水の町、島原を目指した。
(写真下 市街地わきの水路さえも上高地のように美しい島原)