汁物や煮物の出しを取るため、煮干しと昆布を水につけている。
夏はそれが発酵して美味しい出しになる。
温度の低い冬はさらりとした出しができる。
化学調味料なら手間はかからないけれど、
出しを準備する行為は和食の基本だから、
なるべく欠かさないようにしたい。
今日はあいにくその煮干しが切れていたので、
鰹節の残りを使うことにした。
鰹節は年月が経ちすぎてカンナでは太刀打ちできない。
そのため残ってしまったものだった。
多分買ってから10年は経っているだろう。
鋸で切るには小さすぎるし、
アイスピッチャーを使ってたたき割るしかないようだ。
それなら細かくできて水につければいつか柔らかくなるだろう。
丸太の上に新聞を敷き、鰹節にアイスピッチャーをあて、
金づちで力を込めて叩いた。
鰹節は石のように割れ、切れ端は矢じりのように尖っている。
その断面が赤く光って、まるで宝石のように見えるので驚いてしまった。
深い緑や黒色もあり、表面はガラスのようだ。
誰もこれが食べ物とは思わないだろう。
だから、それ以上細かく砕くことが躊躇われた。
カツオの柔らかい赤身がこんな風になるなんて。
これは出しにしないで誰かに見せなくては。
そして、これが何だか尋ねてみようと思う。