遠くに住む友人と電話で話していたら、
テレビについての話題になった。
「今日のワイドショーはどこの番組も賞の話ばかり」と言う。
賞とは米国の野球の賞で、大変な記録を作った選手に与えられるらしい。
私はスポーツにはとんと疎くて、特に野球のことは分からない。
そんな大賞があることも知らなかった。
今回の受賞者の選手は今までよくニュースに登場していて、
そのさわやかな風貌や言動に嫌みがなく好感の持てる若者だし、
受賞は素直に拍手して上げたい。
友人との話の流れの中で、放送の時間についてのことになった。
私が「ベラルーシのシリア難民のことなんて数分もしないのにネ」と言うと、
友人はそれは当然のことだと語気を強めた。
人は「暗い話ばかりでは生きていけないから」と、意見が続いた。
確かにチャンネルを変えるたびに難民の子供たちの苦しむ姿を見せられたら、
ワイドショーの視聴率は下がるだろう。
でも、スポーツに興味のない人間にとって、
受賞の話題ばかりを見せられるのはちょっとしんどい。
そんなに放送枠があるのなら、
人の生死にかかわる問題を深堀りして流してもらいたい。
何故ならそうしたことは遠い国の話で自分と無関係だと思っても、
決して他人事ではないから。
巡り巡っていつかは自分たちの身に起こってくるかもしれない。
ナチスの時代も人々は暗い話から遠ざけられて、
スポーツや音楽がプロパガンダに使われていた。
隣人一家が身一つで収容所に連れていかれる姿を横にしながら、
人々は美しいものだけを見て過ごした。
結局それが国の没落を招いた。
友人とのやりとりはほんの数分だったけれど、
もしかしたら気を悪くしたかもしれない。
でも、お互いの本音をぶつけ合えることは良いことだと思う。