久しぶりに隣町の図書館へ行った。
多分1年以上経ったと思う。
ここでバックの苦手な私は車を柱にぶつけたのだった。
ほんのコツンが車には大きな凹みを作ってしまった。
石の柱は何事もなかったように立っていた。
ここへ来たのはそれ以来のことである。
人間とはどんなに合理的な人でもつい験を担いでしまう。
思い出したくない場所へは足が遠のくのだ。
気持ちの変化を待つにはある程度のモラトリアムが必要だ。
今は車の傷を見ても当初のようにショックを感じない。
久し振りの図書館には大変驚いた。
雑誌コーナーのテーブルもなくなり、
5つほどあった読書室には入り口に本が積み重ねられ、
入れないようになっていた。
コーナーのあちこちにはコンテナが置かれて、
一度手にした本は消毒のためにそこに入れなければならない。
10冊手にすれば10冊入れて棚に戻すことはできない。
図書館の本とはちょくちょく取り出してみるものだから、
こんな制限があってはろくに本を引き出せない。
また係の人もいちいち消毒し、
元あった場所へ戻さなければならないから面倒だと思う。
立ちっぱなしで過ごす制限時間は1時間で、
係員が静かに目を光らせている気がしてならない。
これは県の方の支持なのか市や町独自のやり方なのか。
最近は趣味の図書館巡りもせず、比較はできない。
私は他の人たちがやっているように、
壁に身体を持たれかけさせて、読みたかった雑誌の最新号を開いた。
以前は椅子に座ってじっくりと読めたのに、
こんなことで何か効果があるのだろうかと思ってしまう。
立ち読みは疲れたけれど、時計を見ると1時間が経っていた。
あっという間だった。
読書とはゆったりとした時間が必要なのだ。
でも、係の人に見られているようで、
急いで図書館を出ざるを得なかった。