太陽光パネルの間に残った三角形の遊休地には、
時々、高齢の男性が草刈りをしている姿を見かける。
この遊休地には作業小屋もあって、
アンテナがあるから電気も通っているのかもしれない。
初めの頃は草刈りだけだったのに、
いつの間にか雑草地には畝が作られ菜園になっていった。
年を重ねるごとに野菜の種類も多くなり、
今はナスやピーマンの夏野菜のほかにお花も咲いている。
時折、見かけるその人に初めて声をかけたのは先日のこと。
敷地から道路に飛び出たお花を貰いたかったのだ。
人嫌いの人かもしれないと少し躊躇したけれど、
私の挨拶に「何本でも採っていってください、土ごと持って行っていいですよ」と、
気持ちよく応じてくれた。
遠慮しながら百日草の赤や黄色いマリーゴールドの花を数本だけ抜き取ると、
その人が小屋からわざわざ袋を持ってきてくれた。
男性はこの土地の持ち主で、
退職後に土地を買って菜園仕事を楽しんでいるそうだ。
今は草むしりで大変だと言った。
何年も姿を見ながら初めて言葉を交わした人。
帰り際に丁寧にお礼を言うと、
「枝豆2本残っているから抜いていったら」と言われた。
私はまた袋を頂いて、その人の畑で豆の葉を払い、
太った青い実の房だけを袋に入れて持ち帰った。
知らない人に声をかけただけで今夜の一品を頂いたのである。
人って捨てたものではないなとつくづく思う。