町を散歩していたら、公園の入り口に不気味なキノコが目に入った。
雨の続く日のせいで入り組んだ傘がべたついている感じだ。
それは、濃い茶色をしてぐにょぐにょと重なり、見た目がいかにも毒々しい。
これに気づいた通行人は、きっと後ずさりして逃げ出したに違いない。
見た目がそんなふうだから誰にも採られず、こんな大きく成長したのだろう。
私はこれが食用のキノコであるキクラゲだということを知っているので、
見つけた時は人知れず小躍りして喜んだ。
早速ぐにょぐにょとした肉厚のそれを大木から剥がして、
買い物袋に入れて頂いた。
町中とはいえ壮大なる大地からの贈り物だ。
帰りに友人宅に寄りお裾分けしたら、
こんな食用のものが通りにあるのかと感心していた。
半信半疑の目をしていたけれど、どうやら夜の汁に入れたらしい。
私はこれまでキクラゲはお店で買ったことがなく、
殆どが自然の中で偶然見つけて採取してきた。
今回のように車の行き交う大通りの際に生え、
またこんなに大きくなったものを見つけたのは初めてだった。
思えば子供の頃、庭の木についていた干からびた黒いキノコを、
食べることの出来るキクラゲだと父に教えてもらってから、
ずっとこのキノコは自分の目で探すものになっていた。
そのことが高じて野山を歩くようになってからは、
色んなキノコを採っては食べてみた。
キノコは毒に当たるととても恐ろしいので、かなり神経を使って同定してきた。
それにしてもこんな不気味なキノコでも、
大昔の人は食べなければならなかったのだ。
最初に口にした人は偉いと思う。
大昔の人はただ食べるだけに生きたのだから、
大変だったなあとつくづく思う。