庭の芝生の脇に10年ほど前にブドウの木を植えた。
そこは日当たりも風通しも庭の中では最も良い場所だ。
これまで、やり方は知らないけど、
枝が伸びるたびに棒を立てたりして簡単な支えをして過ごしていた。
食べるほどとはいかないけれど、口に含む程度の実がなっていた。
去年、その木を伸ばし収穫を得ようとして竹をもらい受けて、
四隅に棚のようなもので補強してみた。
これで少しは安定し、収穫もあるかと期待したけれど、
残念ながら、去年の秋は味見さえできないほど実が残らなかった。
冬に少し伸びやすいようにベランダから紐をつけてみたけれど、
今年はなおいっそう花が咲かず、
4つあった花房はいつの間にか枯れている。
このブドウの木は毎年気味の悪い虫がつき、
葉は穴だらけになって終いには茎しか残らない。
きっと数えると何千匹という数字になるだろう。
でも、そんな中でも4房ほどは耐えきって残っていたのだった。
売り物のブドウはどれほどの薬を使って育てられるのだろうか。
今年もブドウの葉に淡黄色の虫がうじゃうじゃしていた。
棚を少し高く作ったので、触れると頭の上に落ちてきそうだ。
現に服にくっついていて思わず悲鳴を上げた。
これにはいずれもっと不気味な毛虫に変わる。
何という名の害虫なのか調べてみたけれど、
アメリカシロヒトリにも似ているようで判定できなかった。
外に出るたびに葉を鋏で切って、
たくさんくっついている虫を長靴で踏んで殺してきた。
もう、うんざりだと思う頃には木がすっかり裸になっている。
そんなブドウだからいっそ切り捨てた方が良いのかもしれない。
そう思っていると、どこぞの山から下りてきたのか、
シジュウカラの親子が虫を見つけてつついていた。
ブドウの虫も私に踏まれるよりも鳥たちの餌になった方が、
この地球の連環に相応しかったのかもしれない。
でも、切ってしまおうと強く思っている。