昼前に番号だけが表示された知らない人からの電話があった。
私の携帯電話に登録されているのは、
少なくとも一度は関わり合った業者とか知人の番号だ。
普段ならそんな電話は無視するのだが、
「もしや」と思って電話を取った。
昨日、どこかで失くしてしまった位置情報機器には、
私の名と連絡先を書いてメモを貼ってあった。
こんなこともあろうかと念のための策だった。
だから、昨日はもし親切な人が見つけてくれたなら、
何らかの連絡があるのではと一縷の期待があったのだった。
電話の主は高齢の男の人だった。
「○○さんですか?」との一言に、私は飛び上がって喜んだ。
すっかり諦めていたのでまるで降ってわいたような話の感じだった。
その人は今、まさに山頂の丸太のベンチにあった忘れ物を見つけたそうだ。
全く記憶になかったので、私はとても驚いてしまった。
確かに要所要所で機器を取り出し、位置情報を確認していたけれど、
そのままそこへ置いて行ったとは、相当なうっかり者だ。
電話の声が不明瞭だったため、
なるべく近いうちに取りに行くことで話はついた。
早速一緒に探してくれた友人に連絡しておいたら、
仕事中にも関わらず「良かった、良かった!」という返信があった。
昨日の帰りの道すがら、友達とはこんな会話していたのだった。
忘れ物に連絡先が書いてあったら何パーセントの人が連絡するだろうか、
スマフォを落としたとしてどれほどの人が拾ってくれて交番に届けるか等々。
今回は親切な人が連絡をくれたのだ。
まだまだ人は捨てたものではない。
早いとこお礼を持って受け取りに行かなくてはと思っている。
それにしても何という時代だろうか、
相手は山の上から私に連絡をくれたのである。
一昔前の人が聞いたらびっくりするに違いない。