私は季節の果物をよく酵母にする。
酵母にするためにはリンゴやイチゴなどの果肉や皮を、
よく煮沸消毒したガラス瓶に入れ砂糖を加えて、
数日室温でそのままにして発酵を待つ。
温度の.高い時期はすぐにぶつぶつと発酵し始め、
簡単に酵母を生じさせることができる。
瓶の底に白く濁ったおりのようなものが多分酵母菌なのだろう。
化学とかに強かったら分かるのかもしれないが、
菌が自然発生するのだと思う。
その発酵液を使ってパンを作っては見るけれど、
これがなかなか難しくて思い通りにはいかない。
でも、果物があると必ずと言ってよいほど発酵液を作ってしまうため、
冷蔵庫の野菜室には何本も手つかずの酵母液が眠っている。
ある時、その1本を味わってみたら、結構酸味が強くなり、
酢の代わりができるほどになった。
だから、それを知って以来、お酢はあまり買わないようになった。
最近は秋に作った柿の酵母水がうまい具合まろやかな酸味があり、
ドレッシングの基にしたり納豆に入れて使っている。
今日、遠くに住む友人が庭の柿の木で作ったという、
3年物の「柿酢」とやらを送ってくれた。
手紙によると、柿のヘタを取ってカメに入れ、
そのままずっと放って置くと、こんなふうになると言う。
柿はどんな種類でもいいらしい。
色は私のものとは違い、深い飴色をしていて古酒の雰囲気がある。
まるで、韓国ドラマの「チャングムの誓い」の秘伝の酢のようだ。
蓋を開けたらツンと鼻を突く強い酸味を感じ、
少し味わってみるととても強い酢になっていて驚いた。
その酸味の半端ではないことといったら、私のものの100倍はある。
私が何となく自家製酢と思っていたのはたいしたことのない代物だった。
さて、この頂いた酢、どんな料理に合うのだろうか。
今は渋柿などは枝にたわわに実がついたまま、
放置されているのを道すがらよく目にする。
採って干し柿にしたり、こうして柿酢を作ったり、
面倒なことわしなくなった。
全てがスーパーで事足りる。
それが食を取り巻く日本の現状だ。
柿酢を見ていると、先人たちがいかに食べ物を大切にしたかが分かる。