最近、文房具屋さんが町から消えている。
昔は小・中学校の校門のそばには必ずと言ってよいほど、
小さな文房具屋さんがあった。
お店で鉛筆やペンを見ているととてもワクワクとしたものだった。
必ず店番はおばさんで、どちらかというと意地悪な人が多く、
それでも思い出すと何かほっこりとした雰囲気があった。
そうした懐かしい文房具屋さんは消え、大型モールに店ができたけれど、
そのモールでもだんだんと売り場面積が小さくなっている。
今はコンビニの一角にビニールパックされたペンなどが売っている。
何と味気ない時代になったのだろう。
先日、引き出しを整理していたら、
ウインザーアンドニュートンのインク瓶が出てきた。
ピンクや緑や青などのインクが小さな可愛らしいガラス瓶に入っている。
輸入物の文房具が大好きだったから、
もちろん町の文房具屋さんではなく、
デパートの文具売り場などで少しずつ買ってため込んでいたものである。
今年、アルハンブラ宮殿の土産物売り場で買ってきたペンは、
インクをつけて文字を書く昔ながらのものだ。
今時、万年筆はおろか、こんなものを使う人はないと思うけれど、
文房具の好きな私は思わず手にしてしまった。
瓶を眺めていると、
インクをつけて文字を書きたくなった。
でも、古くなって蓋が固まってしまっていた。
そこで、インク瓶をさかさまにしてお湯に入れることにした。
アルコールストーブでじわじわと温められるインク瓶、
ジャムの蓋じゃあるまいし、
おかしなことをしているなと滑稽に思った。
熱湯寸前で取り出すと蓋が回った。
インク独特の匂いがする。
さて、これで友人の手紙に返事を書こう。