今日は遠くの町で登山をしてきた。
風邪を引く前に友人と約束をしていたため、
実行するかどうかとても悩んだ末の決行だった。
もし、歩き通すことができたなら風邪は完治と言える。
そう思い、はっきり言って無理をして約束を実行した。
家の近くのリトルヒル公園のアップダウン散歩道とは違い、
そこは本格的な山で、健脚の人でも6時間以上はかかる。
以前の私ならそのくらいは平気なのだが、
今日は病み上がりのリハビリ登山でもあるし、
しよっぱなから友人について歩くのがとてもきつかった。
彼女が選んだコースはどちらかといえば難路で、
どのガイドブックにも以前は「危険」と書かれていた。
確かに、中盤からは岩場の続く急登をよじ登らなければならず、
体中から汗がほとばしった。
途中で何度も休憩を入れてくれたけれど、
このコースは山頂に行くまで途中棄権のエスケープルートはなく、
上ってきた岩場の尾根を下って戻るのは危ない。
だから、どんなことがあっても上を目指さなければならず、
そう思うと不安で胸が塞がれそうになった。
やはり、病み上がりで本調子ではないのだ。
でも、出発から約4時間半、
やっとのこと標識のある頂きに立つことができた。
ここまで長かったし辛かったから、達成感は半端ではない。
しかも、今やってきた道に「ここから先、危険」との注意書きがある。
難コースをやってきたのだと思うとなおさら嬉しい。
青空の下に名も知らぬ山々が360度に渡って広がっている。
ここを何度も訪れているという友人が、
山の名前を一つ一つ教えてくれた。
それにしても、彼女は全く疲れた様子が微塵もない。
さすが毎週のように登山をしているプロだなあと思った。
お昼をとっくに過ぎていたけれど、
スープを温めおむすびを食べ、半時間ほどゆっくり過ごした。
人気の山らしいが、この日は貸し切り状態の静けさだった。
誰もいないなんてこんなことは初めてと、友人がとても驚いている。
それから、帰りは来た道を通らず先へ進み、
枯葉で埋まった歩きにくい急登の道を下った。
ブナの森に足音がカサカサと響き、時折見られる赤いモミジに救われる。
何度か転びそうになりながら、遠く先を行く友人の後姿を追い続けた。
私の足は上りで酷使したためふらふらになっていて、
下りに余裕はなく限界に来ていた。
でも、案内してくれた友人に心配かけると悪いし、
またどんなことがあっても下山しなければならないため、
最後の力を振り絞るようにして歩き続けた。
こんなにきつい山歩きは実に久しぶりだった。
登山は約8時間かかり、電車を待つ間、
友人がコンビニまで走って買ってくれたビールで乾杯する。
これで長かった風邪の日々と完全におさらばしたのだ。
そう思うと、今日の約束を実行してつくづく良かったと安堵した。
一緒に歩いてくれた友に感謝だ。