野営場から帰ると、親しい友人から宅配便が届いていた。
白い熨斗(のし)紙に何と『陣中見舞い』と書かれてある。
もうほとんど風邪との戦は終わりかけていたけれど、
それは何より嬉しい贈り物だった。
私が風邪で臥せっていたことを知っていたのは、
家族とごく近い友人だけで、これはその近い友人からのものである。
近いといっても他県に住んでいるため、
年に数回しか会えず、時々私の方から電話を入れている間柄だ。
もちろん今年は一度も会っていない。
最近は私がよく体調を崩すので心配してくれ、
今回の『陣中見舞い』となったのだと思う。
礼節正しい昔気質な人で頭が下がる。
贈り物の中身は北の果て利尻島の昆布詰め合わせだった。
昆布、とろろ昆布、塩わかめ、瓶詰昆布海苔…
私は毎朝のみそ汁や汁物には昆布と煮干しの出しを使うため、
上質のものを1年に1度ほど築地に買い出しに行っていた。
いつも買う乾物屋も決まっていた。
ところが、今年はコロナのせいで築地への買い物は出来なかった。
つい先日、スーパーでペラペラの徳用だし昆布を、
間に合わせで買ったばかりだった。
だから、この贈り物はとても嬉しい。
出しが上等だと豊かな気分になるから良い昆布は欠かせないのだ。
利尻の昆布は肉厚でしっかりとした出しがでる。
それで作ったとろろ昆布も最高だ。
昔から北の昆布は西の果てで最も多く消費され、
西の生まれの私は食卓にとろろ昆布が欠かせない。
荷物の間に利尻・礼文島の観光パンフレットが入っていた。
「神秘の時を刻む…」とのキャッチフレーズが印刷されている。
青い空に紺碧の海、貴重な花々の写真が幾つも載っている。
友人はここに何度も訪れているというが、
私は果たしてこの美しい島に、
いつの日か訪れることができるのだろうか。
そんな感慨に耽っている。
でも何より感謝。