いつもの日曜の用が突然なくなったので、
時間つぶしに隣市の大きな中央図書館に寄ってきた。
ここは敷地内に幾つかの文化施設があり、図書館は自由に利用できる。
こんな時、本当に図書館の存在はありがたい。
本に囲まれていると2時間なんてあっと間に経ってしまう。
それより何より家に戻ると信じられないほどの灼熱地獄が待っているし、
少しは涼しくなる閉館の時間までいることにした。
何か面白いものはないかなと棚を物色していたら、
『コロナの時代の僕ら』というタイトルが目に飛び込んできた。
作者はパオロ・ジョルダーニというイタリアの現代作家で、
当然初めて聞く知らない人の本だ。
題名だけを見て、「コロナ」が今の禍となっている同じコロナとは思わなかったが、
巻末を見ると発行が今年の5月と新しい。
ページを開くと、そこにはまさしく『コロナの時代の僕ら』が語られていた。
解説によると3月4日に書き下ろされ、20日付でイタリアの新聞に寄稿されたらしい。
それが、すぐに日本語に訳され書店に出回ったのだ。
作者は「SARS-CoV-2」(今問題になっているウイルスの名)を科学的に説明し、分かりやすい言葉で自分の気持ちをエッセー風に吐露する。
理系に弱い私などは「指数関数的」と言われても少しもピンと来ないのに、
ビリヤードの玉がぶつかった時のことなどを例に用いた、
物理学者の彼の説明では素人にも納得しやすい。
全体を通して独特な清廉な空気を感じる。
グローバル化や土地の開発で未知のウイルスが出てくるため、
コロナが終息しても新たなウイルスが生まれるという考えは私も同じだし、
何より彼の人間を見る目の優しさに心打たれた。
彼は最後に忘れたくないこととして幾つかあげ、
いずれ過ぎ去った後の自分たちの生き方を問うている。
ざっと読んだだけで借りてこなかったけれど、
借りて来れば良かったと後悔している。