昨夜、一晩中喉の痛みで眠れなかった。
汗もびっしょりかいている。
熱を測ると38度近い。
節々の痛みはないから熱があっても身体は起こせる。
階下に降りて喉飴を探し、それを舐めて痛みをごまかした。
でも、唾を呑むたびに意識が戻り、
破線のような眠りしかできなかった。
ここ数日、喉に何となく違和感を覚えていた。
でも、テニスコートも特段疲れも感じないで駆け回れたし、
掃除や洗濯の日常生活に一つも支障はなかった。
食欲も普通にあるし、味も匂いもちゃんと分かる。
でも、今は喉の痛みが激しくなり、熱で汗まみれだし、
風邪にやられたとしか思えない。
コロナ騒ぎのこんな時に風邪なんて悔しい限りだ。
喉飴を二つ舐めて冷たい水を飲んでも安眠は訪れなかった。
何か喉に優しい潤いのある甘さが欲しい。
そうだ、桃があったっけ。
再び立ち上がって階下に降り、
冷蔵庫の野菜室から桃を取り出した。
これは友達が取り寄せたという福島の見るも見事な桃、
たった一つだけれど、お裾分けしてもらったものだ。
大きなまん丸の桃の真ん中に切れ目をぐるっと入れて、
両手でねじって半分に切る。
流しに立ったまま、
それを包丁で小さく切っては、口に押し入れた。
桃は汁が落ちるほどトロリとした柔らかさだった。
ひきつる喉に流れ込んだ桃の水密で、しばしの至福の時が訪れた。
そういえば昔は桃のことを水蜜桃と呼んでいたっけ。
これこそ水蜜桃だ、有難い名前だ。
近頃は水蜜桃ってあまり耳にしないなあ。
それにしても、お昼に飲んだ風邪薬や、
今しがた舐めた喉飴の何倍も効果を感じられる。
実に貴重な桃だった。
さて、眠らなくては。