今日は運転中、ずっと自分で朗読した『ペスト』をヘッドフォンで聞いていた。
一度声を出して読んでいるのに、なかなか細かいところまでつかめないから、
こんなふうに何度も繰り返し聞くと、
物語の中に自分が入っているような気がする。
そろそろ家に着く頃になって、内容は一層深まってきた。
恋人に会うために、ロックダウンされた町から出ようとする新聞記者ランベールに、
主人公の医師リウーが、ペストと戦う唯一の方法は「誠実さ」だと言う。
その誠実さは何かと彼に聞かれると、
リウーは「自分の職務を果たすことだ」と答えたのだった。
リウー自身、妻は違う土地の結核療養所にいるのである。
「誠実さ」とは、何という含蓄のある言葉だろう。
私はあらためてカミュの清廉な心を知った。
このコロナ禍の中でオンライン仕事が不可能な職業の人たちは、
感染と向き合い大変な労苦を強いられている。
スーパーの店員、医療従事者、電車やバスの職員、
ゴミ収集従事者、荷物の配達人、市場関係者等々、
私たちの生活に絶対に欠かせない仕事をしている、
いわゆるエッシェンシャルワーカーと呼ばれる人たちだ。
その人たちは黙々と自分の職務を果たしている。
彼らの誠実さが私たちの毎日を支えているのだ。
奇特な人が周りに大勢いたのだった。
その人たちには少しでも多くの休養と報酬を手にしてもらいたいものだ。