カミュの『ペスト』を声を出して朗読し始めてひと月半が経った。
今日まで大体半分ほど進んでいる。
最初のころは読み上げを間違ってばかりだったけれど、
だいぶ上手になった。
このままいくと、あとひと月半ほどで読了となるだろう。
日付で言えばお盆の頃に終わる予定だ。
ただの読書ならとっくに読み終わっていると思うけれど、
今回は何度も録音を聞いて読み返してみたいのだ。
今まで何でも斜め読みだった自分へのミッションでもある。
それに声を出すことは健康に役立つかもしれないし。
『ペスト』はフランス領アルジェリアのオランという実際にある地を舞台に、
ペスト禍に苦しめられる人間模様を描いたフィクションの物語。
それが、この本である。
たまたま自宅にあったので手に取った。
主人公の医師が診察室のあるアパルトマンの階段で、
死んだネズミに遭遇した日付が4月16日で、
日本に初のコロナ患者が出たのは1月13日で、
私が朗読し始めたのは5月14日だった。
今読んでいる箇所は、オランの町が閉鎖され、人々は灼熱の夏を迎えたところで、
登場人物たちの心理や行動が丁寧に描かれている。
伝染病の時期がコロナ禍の世界とオーパラップするような設定で、
フィクションとはいえ現実味がある。
ただし、なぜかいわゆる人と人との「蜜」を避けようという考えは全くなく、
人々は以前にもましてカフェや町に溢れている。
ペストはほとんどが死に至るため、
感染力はコロナどころではないのに、
カミュの視点に「ステイホーム」というものがないのが不思議でならない。
人々の癒しの場である夜の店を閉めることなど考えられなかったのかもしれない。
この本を朗読した当初は、
夏になればこの禍も何となく薄れていくのではと淡い期待を抱いていた。
ところが、数字に一喜一憂したくないけれど、
このところの新規感染者数には胸が胸が塞がれてしまう。
どうしたら良いのか不安が増してくる。
世界中の人がそうなのだろう。
今度こそ、この本を読み終えるお盆頃には、
厄災が去ってほしいと祈る。
どうなるだろうか。