コロナ騒ぎのせいでカミユの『ペスト』が売れているらしい。
確か文庫本で買っていたはずだから本棚にあるはず。
そう思って探してみたが、なぜか他の作品はあるのに、
その本だけが探せなかった。
カミユと言えば、
あの衝撃的な書き出し、
「今日、ママンが死んだ…」で始まる名作、
『異邦人』(エトランジェ)は忘れられない。
主人公のムルソーの名だって覚えている。
これも難解な不条理をテーマとする作品だった。
なのに、『ペスト』はまじめに読んだのかどうか、
あまり記憶になかった。
主人公が医者だったことも忘れていた。
きっと現実離れした物語に感じられたからかもしれない。
私はSF物は苦手なのだから。
あらためてネット動画で検索してみたら解説が幾つかあって、
その誰もが彼の名を「カミュ」と発音していた。
「かみゅ」という発音は「神」が訛っているようで、
私にはどうも耳に馴染まない。
『異邦人』の主人公ムルソーは、
実際の仏語発音は「ムッソウ」なので、
カミュが正しいのは分かる。
でも、慣れ切った呼び名の発音が変わるのには抵抗がある。
ウォーターのことを「ワラ」と変えるようなものだ。
本の表紙をよく見ると作者名は「カミュ」となっている。
どうして今までカ・ミ・ユと発音されてきたのだろう?
カミユが書こうとした不条理をまさに体感している今、
『ペスト』は絶好の読み物だ。
カミユの発音など問題にしている場合ではない。
早く見つけて読書に取り組まなければ。