コロナウイルスのニュースが続々と報道されているけれど、
その間、客船の乗務員の人たちの行動に関しては、
あまり報道がなかった。
顔が一つも見えてこないのだ。
従業員といえど、奴隷ではない。
今回に関しては乗客と同等に被害者だと思う。
ウイルスから守られるべき人達である。
それなのに、彼らは船の中で働き、
食事の準備や配膳、船内の清掃などに明け暮れた。
きっと不安や不満はあったにしても、
声を上げることはできなかっただろう。
4000人近い人たちが船の中に閉じ込められたのは、
史上始まって以来のことだ。
新型ウイルスも初めての経験だ。
それなのに、パニック一つ起こらず秩序が保たれたのは、
ひとえに彼らの沈着冷静な仕事振りにあったと、
私は思っている。
乗客の冷静さもそれあってこその所以だ。
今にして彼らの検査結果が出たのは、
秩序維持に頑張った彼らの検査が後回しにされたのだろうか。
だとすると、従業員同士感染しあって、気の毒でならない。
オーケストラの楽団員がすぐに逃げようとせず、
合奏を続けていたのは有名な話である。
それは、同じくパニックを最小限に抑え、
最後まで秩序を保とうとした結果なのだと思う。
今の私たちのように自由で平静な暮らしからは想像しがたいが、
こうした狭い空間の中での一大事の場合、
何かしら自己犠牲的な美学が生まれるのだろうか。
だとすると、人間には未来がある。
今後、この騒動が収まったとき、
関係した人たちの記録が多く明らかになるだろうから、
とても知りたいと思っている。