鶏肉を美味しくするため、
焼くときは必ず果物の酵母液に浸している。
その酵母液はもちろん自家製で四季折々の果物で作る。
たとえば春は苺、夏はビワ、秋は柿で、冬はかんきつ類など。
ざっと洗った果物またはその皮も使い、
瓶に入れて水を足し、大匙1杯ほどのお砂糖を加えておく。
夏なら2日もせずに音を立てて発酵し、
寒い冬なら少し温めた状況で数日置けばどうにかなる。
瓶に耳を充てると「ピリ、ピリ」と音がして、
微生物がしっかりと働いていれは発酵していることになる。
色も果物独特の色になり、香りもそれぞれの個性が生きている。
その液体の上澄みを鶏肉に浸すと、
安くて固い胸肉などがとても風味のある軟らかな肉になる。
塩麹も良いけれど、
自宅の材料でできる果物酵母は安全で経費もかからない。
何より自作というところに大きな魅力がある。
その果実の酵母はしばらく野菜室でそのままにしていると、
いつの間にか酢に変っていく。
化学者なら化学変化の複雑な仕組みが分かるのだろうけれど、
素人の私はただ舐めてみて酸っぱくなったら、
酢ができたと思っている。
そうしてできた柿の酢が今はわが家の食卓を飾る。
冷蔵庫に入れてひと月ほどは使っている。
量産品ではないたった一本の柿酢ドレッシングである。
酢も生き物なのである。