富士急に乗って山へやって来た。
大月から河口湖まで走るこの電車は私にとって初めてだった。
満員の車内は殆どの人が山スタイルときている。
集合場所の駅からタクシーに乗り、
林道のゲートから二時間ほど山道を歩いてやってきた。
この山にはまっ白い富士山が視界全面に立ちはだかる絶好のテン場があり、
仲間でワイワイ忘年会をするのだった。
力のある仲間が五キロもあるテントを担いでくれ、
それが一夜の宿となった。
赤いドームは屋根も高く、六人が入っても余裕があった。
バーナーを焚くと一挙に春のような暖かさになり、
外の寒さが嘘のようだ。
まだ時間は昼の三時ととても明るかったけれど、
私たちはまずビールで乾杯した。
荷は最低限にしなければならないから、
ビールはみんなで2缶だったけれど、
ワインは誰かが1本運んでくれたし、
ペットボトルに小分けされたワインもあった。
それぞれが自慢の肴を持ってきていて、
テントの食卓は家のそれよりはるかに豪華だ。
食事当番が運んだ具材は、
熱い鍋料理となって身体を温める。
飲み進めているうちに富士の空には星が瞬き始めた。
月は新月で星の光を際立たせている。
空気は零下のように冷たいけれど、宿の中は別天地。
天幕には笑い声がずっと絶えない。
時折、どこからか花火の音が「ドーン、ドン」と聞こえてくるが、
どこなのか。
私たちのパーティを祝ってくれているのかもと、皆で言い合った。
ソロも好きだけれど、こんなふうに仲間と騒ぐのも一段と楽しい。
来てよかったとつくづく思う。
さあ、明日はみんなと登山だ。
日帰りできないことはない山なのだけれど、
今回は忘年会が目的だから、
こんな贅沢なプランを立てたのだった。
ヘタレの私が歩けるかどうかちょっと心配だ。