町を歩いていたら大道芸のお祭りをやっていた。
年に一度の大会らしく、世界中の芸人が集まって技を競うという。
道のあちこちで大勢の人々が取り囲んでいるので、
背伸びをしなければあまりよく見えなかったけれど、
一つだけ面白いものを見た。
ビキニ姿の女の人が何人か芸をしていて、
手や足を使い、棒につかまって、
アクロバット的な動きを披露しているのだった。
前にちらっとテレビで見た気がするが、現実では初めてだ。
子供や老人たちが食い入るように眺めていて、
一つの型が決まると拍手が起き、何とも不思議な空間だった。
大道芸というのは、
日常ではあり得ないことを、
道端や広場で見物人に披露する芸である。
古くからどの国にもあったようだ。
日本でもよく知るところでは、
皿回しや猿回し、火吹き芸などがある。
ここではその道のプロが集まっているため、
かなり高度な芸を見ることができるようだ。
そのため多くの観光客が来ている。
芸とはそもそも非日常そのものだけれど、
最近、動画投稿サイトが非日常で溢れてしまったので、
状況は変わったのではないだろうか。
そのため、相当な芸ではないと、
観客を喜ばすことは難しいと思われる。
だから、ここに集まった世界の芸人さん達の日々の努力は計り知れないだろう。
彼女たちの力強い芸を眺めていると、
ふと、富士山で滑落した青年のことが頭を過ぎった。
彼も非日常を人々に見せようとして、
雪の富士登山を生配信していたのだろう。
ネット社会は大衆の非日常への欲望を容易に満たすため、
危険と隣り合わせの究極を求めているようにも思える。
大道芸は自分の目で見てこその非日常だと思った。
(写真:下の方は人込みで見えないが、5人ほどの演技者が全体で型を作っていたよう)